井の頭線は本来無関係だったはずの街を斜めに結びつけ、独特の空間を沿線に創出した。井の頭線にはそれともうひとつ、その路線のかたちに由来する特徴がある。それは都心の近くにありながら緑豊かな自然と、昭和初期のモダニズムの息吹がこの沿線にいまだに残っていることである。このことは、井の頭線が開業以来、ほとんどかたちを変えていないということに由来する。ここでいうかたちとは、路線のルートはもちろん、街やほかの交通網など周辺環境との関係から生じる空間構造のかたちをも含む。
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井の頭線は計画当初から、将来の交通量増加にともなう渋滞の発生を見越して、できるかぎり踏切のないよう高架・掘割を多用して建設された。井の頭線よりも前につくられた鉄道路線はこんなことを考える必要はなかった。郊外というもともと人のほとんど住んでいなかったような土地を切り拓いてつくった鉄道はつまるところ、周囲の環境を考慮することなく、ただ地面に線路を敷いていけばよかったからだ。